苔の基礎知識

苔の性質
土が無ければ生育できない多くの植物と違い、苔は発達した根を持たない植物です。苔の根は水分や養分を吸収出来るような根ではなく、仮根と呼ばれ、土や樹皮などに体を固定する程度のものです。コケは体全体で水分を吸収し、光合成で生育する植物なのです。また、種類によって乾燥を好むもの、湿性のもの、日向向きのもの、日陰に適するものなど、苔によってかなり性質の違いがあり、園芸で利用するときはこの性質を理解する必要があります。
利用できる苔は?
苔植物は大きくタイ(苔)類とセン(蘚)類に分けられます。タイ類はゼニゴケのように葉と茎の区別のつかない苔で、セン類は杉苔のように葉と茎がはっきりと区別できる苔です。園芸素材としてはセン類の方が主に使われ、その中でも30種類程度がよく利用されているようです。園芸素材として利用される苔はおおむね乾燥性のもので、半日陰(明るい日陰)から好日性の丈夫なものがよく利用されます。
施工に適した場所は?
苔の種類によって日当たりの良い場所、半日陰など、それぞれ異なりますが、戸外で夜露が当たるような場所が適しています。雨が少ない時でも夜露から適当な水分を吸収することが出来るからでしょう。軒下など雨や夜露の当たらない場所は苔が乾燥しやすく、綺麗な状態を保つのは難しくなり、傷んでしまう原因となります。
苔に適した土、植栽方法
下地の土質は赤土、黒土、山土、真砂土等が使用可能です。(スナゴケは川砂も使用可能です)又、火山灰、海砂、砂利はどの苔にも不適切です。植栽時期は四季を通して選ばず、年中植え付け可能です。肥料も必要ありません。水はけの良い土で下地が整えば、水を充分まき、ドロドロの泥土状にして、シート状の苔を一枚ずつ押し付けるようにして貼りつけて下さい。シート単位で貼れない場所などは自由に苔を切って貼りつけて下さい。その後良く地面と接着するように、地ゴテ、木ゴテ等で苔の上から充分たたいて貼りつけて下さい。
灌水(かんすい・水やり)
苔を貼りつけた後は充分に灌水して下さい。特に夏場は乾燥するので、朝、夕2回ぐらい灌水し、冬季は平均2,3日に一度でも十分です。又、常に苔の根元が水に浸かっている場合は用土を上げるか、水の浸入を防ぐなどの処置を行って下さい。苔は水中では育ちません。
病害虫
苔は害虫に葉を食害されることはありませんので、殺虫剤は必要ありませんが、細菌によって傷んだ場合は細菌を殺すために消毒をします。薬は殺菌剤のベンレート、ダイセン、ジマンダイセンなどを使用します。傷んで赤茶色をした苔は約半年程度で回復しますが、新しい苔を植栽し直した方が早く景観を回復出来ます。又、細菌とは違い、犬、猫、鳥等の糞(フン)、又は肥料中の尿素による枯死は回復が一年ほどかかりますので、植栽し直すことをお勧めします。
除草
苔に生えてくる雑草などの管理ですが、苔は除草剤に弱いので基本的には鎌や手で除草作業を行って下さい。又、ゼニゴケなどが生えた場合は食酢をまくか、ゼニゴケの周りの用土ごと取り除き、新しい苔を植栽し直して下さい。                                              

胞子を出したゼニゴケ・中央から下部に這うようにベタッと広がっているのがゼニゴケです。